第一印象というのは、とても大事なものです。
それは例えば、幻影戦争における何かしらのアップデートに関しても同じことで。実装の予告であったとしても、そのお知らせ内容から受ける印象で、既にそれについての評価がなされてしまったりします。
逆に言うと、蓋を開けてみたら全然危惧していたようなものではなかった、なんていうこともあるのですが、そうであるならばなおさら、第一印象をもっと良くしていればもっとプラスになったんじゃないかな、という思いも頭をよぎります。
それがなぜ起こるのかと言えば、シンプルにユーザー側と運営側で持っている情報量の差、いわゆる “情報の非対称性” と呼ばれるものに起因するのだと思います。
運営側は今後中長期にわたって行われるものを知っているので、その第一弾としての告知のつもりであったとしても、ユーザー側から見るとそれがすべてのように映ってしまうので、その時点で渡されている情報だけで評価を行ってしまうことになります。
僕が個人的にそれを強く感じたのが、1周年で行われたEX化のアップデートでした。
EXがもたらしたもの
あれたはたぶん、FF7リメイクコラボの告知を行う国営放送だったと思うのですが、藤田さんが「今少し属性のバランスが崩れているから、それを整えに行く」というような発言をされていた記憶があります。
その発言の主旨とはズレますが、その時にふと「あ、敢えてバランスを崩しに行ったのかもしれない」という考えが頭に浮かびました。それは属性の話というよりは、幻影戦争全体のゲームバランスについてです。
EX化がされる直前の幻影戦争は、とてもバランスが取れていたように思います。でもバランスが取れている状態というのは、ある意味で運営リスクでもあったのだろうと、その時に思いました。
なぜなら、バランスが取れているのであれば、戦力という観点にのみおいては新キャラの需要が下がると想定されるからです。新キャラを取らなくても十分に戦えるのであれば、別に新キャラを引く必要はない。そうユーザーが考えるのは想像に難くありません。
それは単純に新キャラが生み出すガチャの売上の話だけではなく、ユーザーの飽きを加速させてしまうリスクも含みます。バランスが取れた状態はとても美しく、楽しいけれど、一方で大きく変化しない環境は飽きも生みやすい。だからある程度のタイミングで、整ったバランスを崩して新たな環境を構築していかなければいけない。
いわゆる “インフレ” というのは、競合も同じくらいのスピードで新キャラを出し続けるソーシャルゲームにおいて、運営にとってもユーザーにとっても、もしかしたら必要悪と呼べるものなのかもしれません。
そこで、整っていたゲームバランスにメスを入れることにしたのだろうと思います。ただ、本質的にそのメスを入れる役割を担ったのは、おそらくEX化ではなくユニットコストの底上げだったのでしょう。
2021年1月から、王モント、黒ヘレナ、ディーンとコスト100のキャラが続き、4月から登場したシャルロットを皮切りとして、それ以降のキャラの最低コストは90に設定されるようになりました(セレクエのキャラを除き)。
明確に、コストがインフレしたわけです。
その環境において、仮にEX化が来なかった世界線を想像してみるとどうなるか。
さまざまなアビリティや装備が生み出されていき、ステータスの基準値もコスト90以上のユニットが中心となっていく中で、おそらく旧キャラと言われるユニットのほとんどが出番を失っていたのではないでしょうか。
エンゲルベルト、フェデリカ、ハロウィンリレルリラといったいわゆる旧キャラは、EX化されてこそ今でもなお活躍の出番を持つユニットです。それはEX化によって向上した性能が、新環境でも通じる水準(あるいは通じる一芸)だったからです。
つまりインフレはコストによってもたらされたものであり、EX化自体はインフレを呼ぶものというより、インフレ化した環境における旧キャラへの救済策だったのではないか、と考えられます。
EX化が行われなければ、例えコスト制限のある期間限定ギルドバトルにおいても、ここまで旧キャラが活躍するようなことはなかったのではないかと思うのです。
もちろん、EX化によって必要な素材は増えたし、それに伴う課金も増えた側面もありました。だから売上増加を狙っていないとは言いません(別に売上増加を狙うことが悪いことでもないですし)。
ただその後行われた各種の育成緩和施策によって、1キャラをレベル120にする金銭的コストは、EX前に1キャラをレベル99にする金銭的コストよりも下手すると安いくらいになっていると実感しています。
コスト100のキャラに関しても、昔はコスト80のキャラの倍の価格設定でしたが、今や同額、つまり当時と比べて半額です。かつては月初キャラが2体登場することもザラだったことを考えると、両方のキャラを育てていた人からすれば、月の課金額はかなり抑制されているように思います。
つまり今になって振返ってみると、EX化という施策自体は必ずしも悪手ではなかったのだろうと思うのです。
ただ、もちろんそれは、ユーザーからすれば結果論です。
・このままだと飽和するため、コストインフレを起こして新環境を構築する
・但し、その環境においても旧キャラが活躍できるように救済する
・育成緩和を図ることで、金銭的コストのインフレ自体は抑制する
この3つの情報が揃って初めて、EX化という施策に対する納得感が得られるのだと思います。
でも実際には「EX化が行われます。今までの素材に加えて、400個分の欠片(思珠)が必要になります」という情報からスタートしたため、金銭的コストのインフレが強調されてしまうことになり、単純に言うと「ユーザーの負担が増加する」ことばかりに目が行ってしまったのではないかと思うのです。
もし育成緩和施策が同時実装されていたら、あるいは上記3点をせめて告知だけでも同時にできていたら、もしかしたら印象は全然違ったのかな、と思ったりします。
もちろん、さまざまな事情で「言いたくても言えない」状態だったのかもしれないのですが、個人的には「何を告知するのか」「どういう順番で告知するのか」は、ソーシャルゲームの運営においてめちゃくちゃ重要な要素のひとつなんだなぁというのを、実感した出来事だったように思います。
逆に言うと1ユーザーとしては、第一印象に振り回され過ぎず「一旦どうなるか見てみよう」くらいの気持ちで、各種アップデートに向き合う方がよいのかな、と思いました。
評価は、実際に体験してからにする。
もしかしたら、それくらいの心持ちの方が、気長にゲームを楽しめるのかなと思った次第です。
つづく
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