つぶコラvol.9 他慢

他慢、つまり知人自慢には2つのケースがあります。


1つは「こんな人と知り合いのオレYeah!」というケース。このケースは、要は自慢です。しかも別に自分は何も頑張っていない場合がほとんどなので、厳密には自慢ですらないのですが、まぁご本人がそれでいいのであれば良いのだと思います。


もう1つは誇りたい知人・友人がいるケース。これはまさにそのまま “他慢” です。別に自分は何も頑張っていないのは先ほどのケースと同じですが、別に自分がどうこう言うつもりはまったくなくて、ただ純粋にその友人を誇りに思っているんだということを伝えたいのです。


ということで今回は、そんな後者の “他慢” の話。



親友からの最後通牒


僕は兄の影響で、中学2年生の時にギターを始め、以来どっぷり音楽の世界にハマりました。中学時代はどこかの部活に所属していなければいけなかったため、担任に相談し、当時所属していた部活を辞めてその担任が顧問をしている部活に籍だけ置くという、先生公認の幽霊部員になるほどでした。


当時はヴィジュアル系全盛期が訪れ始めた頃だったため、同級生とコピーバンドを組み、XやLUNA SEAやGLAYの楽曲をコピーしつつ、個人としては技術を高めたいという思いがあって、洋楽のいわゆる “速弾き” 系ギタリストの曲を必死に練習したりしていました。


そんな僕でしたが、高校に入ってベースに転向することになります。その理由は、そこで2人の凄腕ギタリストに出会ったからです。明らかに自分より巧いその2人を前に、僕は競うよりも共に音楽の道を歩むことを選択しました。


それ以来、プログレなどのテクニックばりばり系の洋楽から、突如ブラックミュージックの根源たるブルーズに傾倒し、その流れからファンク、ソウル、R&B、ジャズとブラックミュージックにどっぷりと浸かっていくことになりましたが、3人の関係性は変わらず、ずっと一緒に音楽を演奏していました。

固定のバンドを組んでいたわけではなく、やりたい音楽の方向性に合わせて都度メンバーを集めてライブをやっていたので、その過程でさまざまな人に出会い、影響を受けながら共に成長してきたのです。


特に、高校で出会った2人のギタリストの内の1人とは音楽の趣味が近かったこともあって、たぶん100回以上は一緒のバンドでライブに出たんじゃないかと思います。



そんな彼は大学3年生の始め頃「俺は音楽の道を行く」と決意し、当時所属していた大学のゼミを辞めることになります。そのゼミは、学生の間では「所属しているだけで就活のエントリーは通る」と言われていたほど(ホントかよ)のゼミで、そこを辞めるというのが彼なりの覚悟の表し方だったのだろうと思います。



そして彼は、僕にも決意を問います。


「俺はもう音楽の道に進むことを決めた。おまえはどうする? もしおまえが音楽の道に進まないというなら、もうおまえとは一緒のバンドではやらない」と。


それは親友と呼べる関係性だったからこそくれた、彼からの最後通牒でした。




結論からいうと、僕は音楽の道に進むことを選べなかった。


当時は「ビジネスへの興味が湧いてきたし」とか「音楽を “仕事” にしたくない」とか「親に心配を掛けないことの優先度が高いし」みたいな、それっぽい理由を自分に対して振りかざして、さも “選ばなかった” 風を装っていましたが、後に振り替えるとあれは “選べなかった” が正しい表現だったと思います。僕は音楽の道を諦めた。

何年か経って仕事で自信がついた頃、ちゃんと振返って、ちゃんと “挫折” であったと認識することで、当時の僕を供養したことをよく覚えています。


それでも「彼らは道なき道を行くのだから、舗装路を行く自分は全速力で走り続ける」と誓えたことで、ビジネスの世界で生き延びているのですから、今となっては当時の選択を正解にできたんじゃないかな、という気がしています。



さて、音楽の道に進んだ彼ですが、その後良い出会いに恵まれたこともあり、今なおアーティストとして、コンポーザーとして、プロデューサーとして活躍しています。みんなが知っているみょん系アーティストの楽曲をプロデュースしたり、関西のジャニジャニしてジャムジャムするテレビ番組に出演したり。


当時大学で一緒に音楽をやっていた仲間は、僕以外のほぼ全員が音楽の道に進みましたが、今なお音楽の道で活躍しているのは数人。そんな厳しい世界ですから、彼のここまでの努力と実績は、本当にすごいと思うし、誇りに思うし、同時に負けられないなと強く思います。


胸を張って、堂々と “他慢” できる、大切な友人です。




そんな彼に、なんとこの度イベントのオープニングムービーのBGMを作ってもらうことになりました!

いつかどこかで道が交わるといいなと思いつつ、まさかそれが幻影戦争のユーザーイベントという舞台になろうとは思ってもいなかったのですが、個人的にそれ以来ワクワクしっぱなしです。



詳細は3月に、そしてその音楽を皆さんにお披露目できるのは3月下旬~4月頭頃になるんじゃないかと思っておりますが、ぜひ楽しみにしていただければと思います。



そのイベントの名は、


『Berserker’s Kingdom Re;Union』


ご期待ください。





つづく