つぶコラvol.8 プライドの本質

2021年末に行われた幻影アワードの中で、僕が幻影戦争を今日まで続けてこられた理由が大きく3つあり、そのうちの1つがキャラクターデザインである、という話をしました。


じゃ、残り2つは何なのか。
特に気になっていた人はいないと思うので、今日はそれについて語ってみたいと思います。

※あ、もちろん「楽しいから」というのは大前提です。



1つは、多くの方がそうだと思いますが、幻影戦争のゲームシステムおよびそのゲームバランスです。

ゲームバランスについては、敢えてバランスを崩しているフェーズと、それを整えているフェーズとに分かれているように個人的には見えるため、タイミングによってはバランスが崩れているときはあると思いますが、初期のキャラが今なお輝いたりするくらいですから、幻影戦争のゲームバランスは基本的に優れていると思います。


また、ユニットやビジョンカード(以下、VC)などの手持ちは、強さを決める上でもちろんとても重要な要素ですが、ではそれが多ければ多いほど強いかというと、必ずしもそうではないのが幻影戦争の面白いところであり、ゲームシステムが優れていると感じる部分でもあります。

もちろん手持ちが多い方が、どんな環境になったとしても一定以上の強さ(強さとはバトルの勝率と置き換えていいと思います)を誇ることはできるでしょう。ただ、たとえ手持ちが限られていたとしても、自身の手持ちを活かしやすい環境や相手の編成であれば、自身より手持ちが多い人を相手に勝つことも可能です。

なぜなら、手持ちが限られていたとしても、そういった方々は自分の手持ちの活かし方を本当によく理解されているからです。


僕自身はどちらかというと手持ちは多い方だとは思いますが、戦ったお相手がどこかの赤い彗星さんに見えそうになるくらい、手持ちの多さが戦力の決定的な差とならないことを、何度も教えられてきました。



では、戦力を決定づけるものは何か。
それは “編成練度” だと僕は思っています。


しっかりと練られた編成は、強い人の並びを真似た程度の編成が相手であれば、不利な条件(属性など)すら覆すことがある。それくらい “練度” の差は大きく働くと思います。


それでは、 “練度” とは何なのか。




“練度” という、僕にはないものの正体


うちのギルドに、ぺぺろんというヤツがいます。しっかりとやればできるのに、目を離すとちょくちょくサボる困ったヤツです。そのわりに狂戦士でもある、変なヤツです。


そんな彼が、今でもトラウマと呼ぶくらい、ドツボにハマった時がありました。



2021年1月頃のことです。

当時のギルドバトル(以下ギルバト)マップ『ホルン城 城門前』において、ティーダ・ユウナ・クリスマスヴィクトラという編成が猛威を振るっていました。


当時はまだEX化されたキャラがごくわずかで、有利属性である雷属性でEXされていたのは、年末のコラボで配布された9sくらいだったように思います。

VCも『素敵だね』や『幻視する星読み』など、水属性を強化するVCが目立っていた中、雷属性を強化するVCはかなり限られていました。つまり、有利属性を使った強い編成が組みにくい環境です。


そんな中クリスマスヴィクトラとユウナをスルーしていたぺぺろんは、強いと言われるその編成を倒してやろうと、何度も何度も僕にフレンドマッチを挑んできました。



しかし、勝てない。
勝ったこちらが気を遣ってしまうほどに、勝てない。



戦えば戦うほどに、彼の心を支える柱にヒビの入る音が聞こえてくるくらい、目に見えて彼は意気消沈していきました。「なんだ、このゲーム」と、愚痴とも弱音ともとれる言葉と共に、チャットの向こう側でおそらく何度もスマホを放り投げていたのだろうと思います。


でも、彼は諦めなかった。
何度も諦めようとして、諦めることができなかった。


何度も「もういいや」とスマホを放り投げて、でも頭から離れず、気づいたら「どうしたら勝てるのか」をまた考え始めていて、ふと思いついたことを試すためにスマホを拾いに行く。たぶんそんなことを何度も何度も繰り返していたのだろうと思います。


そして、ついに彼はそれに勝てる編成を見つけ出しました。

「この編成を倒すことに特化しまくったから、汎用性はないけどね」なんて照れ隠しをしながら、勝利の喜びを噛みしめていた姿をよく覚えています。


僕は、何度も挑んでは破れ、挫けそうになっている彼の姿に、「まぁすぐにまた環境は変わるよ」という、励ましているようで諦めることを推奨するような言葉ばかりかけていました。

当時彼は、ギルバトにはそれほど力を入れていないギルドに所属していたので、ギルバトでその編成に勝てなくても何も問題はなかったはず。だから「少し環境が変わるのを待てばいいだけだよ」というようなことを言っていたのです。



でも、彼は勝つことを諦めなかった。
勝てない自分が許せなかった。

何度となく挫けては起き上がり、口では色んな弱音や不満を吐きながらも頭を働かせ続け、彼の手札の中では、おそらくそう幾つもないであろう正解を手繰り寄せた。


その時にわかった気がしました。
“練度” というのは、意地であり、矜持なのだと。
“練度が高い人” というのは、僕が諦めたところで、諦めなかった人たちのことだと。
僕が「これくらいでいいか」と引いた “妥協” と呼ばれる線を引く気なんて、さらさらない人たちのことだと。


そしてプライドというものは、 “ここまでは諦めない” という基準を示すものだと。



そんな姿は、カッコいいじゃないですか。
そんな姿は、誇り高いじゃないですか。



僕のイベントに出てくれるような方々は、そんな方々ばかりなのです。

例に出したぺぺろんも、サボりがちであるがゆえに波はあるものの、本質的にはそういうヤツです。



そんな尊敬できる人たちが、カッコいいなと思える人たちがたくさんいる。

それが、僕が幻影戦争を今日まで続けてこられた、3つ目の理由です。



これからもバランスを大きく変えかねない変更が行われることはあるでしょう。ある意味それは長く運営を続けていく上で、ユーザーを飽きさせないための必要悪とすら言えるかもしれません。

変化の始まりの頃は、特定のユニットやVCを持っていなければなかなか勝てない、なんていう環境が続くこともあるのでしょう。それにより心が折れそうになる時も、きっとあるのだろうと思います。



それでも。
たとえ自分の手持ちが限られていて、勝利を手繰り寄せることができるルートが細い細い糸のように見えたとしても。

きっと愛すべき、尊敬すべき狂戦士たちは、口では色々と言いながらも、決して諦めることなく “練度” を高め続けるのだと思います。



その背中で僕に「未だこの腕を磨くのは、譲れぬ誇りがあるからだ」と語りかけるかのように。




つづく